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いまから約1カ月前の6月27日、京都市内で「洛西ニュータウン竹の里地域の景観を守る運動を支援する会発足の集い」が開かれた。この会のめざすところは、サブタイトルの「景観権の確立をめざして」が示すように、単なるマンション建設反対運動にあるのではない。洛西ニュータウンでの景観訴訟を通して、現在の日本のまちづくりにとって中心課題となりつつある「景観権」の確立をめざそうという、高い決意と志しに貫かれているのが特徴だ。この日のシンポジウムでも、東京国立市、大阪箕面市・豊中市、洛西竹の里地域から4本の報告があり、期待に違わない貴重な経験交流と理論構築の場となった。
しかしこの種の会合やシンポジウムに出席していつも驚くのは、昨年暮れの国立判決などいったい「どこ吹く風」であるかのように、全国的には依然として高層マンションによる乱暴な景観破壊が続いていることだ。例えば、滝や紅葉の名所として全国に知られる箕面市では、周辺を取り巻く山なみ景観は箕面の「シンボル景観」として明治の昔から市民や観光客にこよなく愛されてきたにもかかわらず、いま現在、あの悪名高いリクルートコスモスの超高層マンション建設(22階、約60メートル)によってズタズタに破壊されようとしているのだ。なぜこんな馬鹿げたことが起こるのか。
本紙の読者には自治体職員が多いと思われるので敢えて言うが、一口でいえば、その主たる原因は、箕面でも洛西でも首長の不見識と役人の怠慢によるものだ。洛西では、京都市建築審査会裁決の付言がいみじくも指摘するように、景観形成・保全のために設けられた「10年間の買戻特約付の土地売買契約」の期間が経過すれば、その土地は任意に処分できるようになるのであるから、「10年後対策」は行政常識として考えられて当然だった。しかし現実は、京都市は何らの行政措置も講じなかったし、また土地所有者の京都府歯科医師会(政治献金汚職で悪名高い日歯連の京都支部)は、周辺地域に何の相談もなくマンション業者に土地を売り払い、「あとは野となれ山となれ」とばかりに二条駅前に移転してしまった。公益法人として絶対に許される行為ではない。
箕面市でも遅きに失したとはいえ、1990年代に入ってからは箕面市都市景観基本計画の策定(1991年)、箕面市都市景観条例に基づく「山なみ景観保全地区」の指定(1997年)など一連の措置を始めた。だが惜しむらくは、「高さ規制」(2003年)の施行が決定的に遅れた。その事態を見越したリクルートコスモスが、東京国立のマンション業者と同じく高さ規制施行の直前の駆け込み申請(2002年)によって強行突破を図ったからである。なぜ最初から「高さ制限」だけでもかけておかなかったのか、悔やまれてならない。
このような事態はごく普通の市民でも予測できる。まして首長はもとより自治体職場それも開発担当セクションであれば、日々情報が寄せられているわけだから知らないはずがない。それでいて何の動きもないとなれば、これはもう「怠慢」を通り越した「行政不作為」、すなわち意識的な「サボタージュ」以外の何物でもないといわれても仕方ないだろう。自治体職員のひとり一人に「公務労働」の意味を深く考えてもらいたいところだ。
シンポジウムでの私の発言は、人間の欲求にも「安全・安心」から始まり、「便利・快適」へと発展し、さらには「自己実現・自己表現」へ到達していくというように、幾つかの発展段階がある。同様に、都市計画も公衆衛生的規制や警察的取り締まりからスタートし、生産活動や生活利便のためのインフラ・施設整備へと発展してきたが、現在及びこれからは「市民・住民の自己実現・自己表現のまちづくり」が課題になる段階に達した。この第3段階のまちづくりの中心テーマこそが景観問題であり、美しい景観は「生活の質」の基礎要件であり、「コミュニティ・アイデンティティの表出」である、というものだった。人間にとっての品格すなわち人格が人間足らしめる上で不可欠の要素であるように、都市やコミュニティにとっても品格が不可欠だ。そして地域空間・環境の品格を維持・向上させるための何よりの指標が「美しい景観」なのである。その意味で「景観を失ったまち」は「顔のない人間」と同じだといっても過言ではない。
最後に付け加えたのは、さはさりながら「美しい景観」は凍結的保存だけでは維持できないということである。洛西ニュータウンも建設当初からはや四半世紀近くの年月を数える。都市もニュータウンも生き物である以上、建設当初の姿を凍結的に保存するだけでは「オールドタウン」として退化してまう。進化するニュータウンとしての生命力をいかに創出し維持するか。竹の里地域のマンション景観訴訟はそのまちづくりの第1歩として位置づけてほしい。これが「美しいまちづくり」への私のメッセージである(なお本稿は、『くらしと自治・京都』291号(社団法人京都自治体問題研究所ニュース、2004年7月25日発行)の新連載「美しきマンスリー」に掲載したものです)。
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