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現場主義の研究者として
〜私はなぜ、すまいとまちづくりの研究を志したか〜
広 原 盛 明

4-3 性別分業社会から男女共同参画社会への移行にともなう課題

 そして高齢化と同時に、さらに深刻なのは少子化です。私は人口学会の会員なのですが、少子化の勢いはすごいですね。人口を維持するために産んでもらわないといけない産児数は二・〇七人なのに、合計特殊出生率が一・二九です。三分の二を割っているわけですから、ワンジェネレーション終わると人口が三分の一減るわけです。特に大都市が凄まじく、東京は一を割っています。二番目が京都で、一・一八ぐらいです。三番目が大阪と北海道あたりです。出生率が一番高いのは沖縄です。

 私は、子どもを安心して産んで育てられる環境をつくるのが究極のまちづくりの課題だと思っています。子どもを産み育てるというのは、現在産んで大丈夫ということと、将来子供が幸せになっていけるという二つの見通しがないと、難しいと思います。ですから、将来というのはまさにまちづくりの基本です。今の課題を解決するだけがまちづくりではなく、将来にわたっていい環境や社会をつくっていくことです。その指標が、出生率だと思っています。出生率をどのように回復するか、トータルな勘定として保障していく、しかも将来にわたってとなると、これはまさに政治社会そのもののあり方にかかわりますね。今のように女性が職場や社会からどんどんはじき出されて、母子手当てがカットされてというなかでは子どもが沢山産まれるはずがないでしょう。今、政府が考えているのは移民労働者の大量供給です。介護労働者はフィリピンと協定しています。トヨタなどでの自動車の組み立ては、日系という網をかぶせましたが、現実にはそれを外して雇っているし、そのうちに、清掃や道路工事などにも来るでしょうね。そうなれば当然、日本の新たな外国人居住問題が起こるでしょう。

4-4 集権型社会から分権型社会への移行にともなう課題

 これまで、特に日本の場合は中央集権的な性格が強く、国がほとんどの権限を持っていましたが、それを徐々に地方分権という形にしていっています。最近私がとても危機感を持っているのは、とりわけ地方圏において市町村合併が進んでいることに関連してですが、中心都市は、市町村合併により中心都市にすべての機能を集めています。要するに、今までの市町村は役場も農協も郵便局も商店街も、それから福祉事務所も全部中心部に集めるということをやっています。地方分権という名のもとに、地方・農村・都市の切捨てがおこっている。コミュニティは大変なのです。私はコミュニティ政策学会にも入っていますが、そこでは今コミュニティ政策ブームで、「地域のことは自分たちで」、「住民主体のまちづくり・コミュニティづくり」などと国の役人が言っています。皆さんやってください、と。私はこれを「棄民政策」だと思っています。

 このようななかで、今もてはやされているNGOやNPOですが、すべてがそうとはもちろん思いませんが、日本のNPOの欠陥は政治運動を避けることにあると思います。私の市長選挙のときにもNPOはまったく動こうとしませんでした。NGOは「ノンガバメント」すなわち非政府組織ですが、日本のNGOは「ノンポリティカル」・非政治組織です。本来のNPO、NGOというのは、政治活動をしながら自分たちも行政に参画していくというものであるにもかかわらず、政府が手を引いて「皆さんやってください」という形でなされるということになっています。このような状況も変えていかなければいけません。
 
 ついこの間、私は中国の西安に学生たちとまちづくり調査に行ってきました。西安はいま大開発ブームで、ちょうど四〇年前の日本の公害問題や交通事故の問題、住宅問題の再来です。そこで日本の留学生たちがこれは日本の経験を学ばなければということで、私たちと学生たちと中国の学生たちと一緒にワークショップをやりました。さまざまな提案をしてきましたが、私たちのまちづくりの経験は、これからの中国に一番役に立つと思います。また、東南アジアやアフリカ諸国へも適用できると思います。遅ればせながら、これからはそういう国際交流の活動を大いにやりたいと考えています。以上で終わります。どうもありがとうございました。