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現場主義の研究者として
〜私はなぜ、すまいとまちづくりの研究を志したか〜
広 原 盛 明

1 はじめに

「現場主義の研究者として」という題をいただいたのですが、サブタイトルを「私はなぜ、すまいとまちづくりの研究を志したか」としました。というのは学問の性格によって、方法論も非常に違います。現場主義というのはそれなりに意味を持っていますが、私の現場主義という方法論は、すまいやまちづくりをやってきたということと不可分に結びついています。このようなことを冒頭に言いますのは、私が院生から助手になったころの話に関係があります。私は一九三八年(昭和一三年)生まれで、学部の卒業が一九六一年(昭和三六年)で、ちょうど高度成長期でした。ですから学部四年生のときに安保反対の時代であり、卒業するときに池田内閣の高度成長政策で「月給二倍にします」といわれて、みんながコロッと寝返った時代です。文字通り、高度成長期の一期生です。それからの一〇年間というのは、都市の開発ブームで公害問題が発生し、公害反対運動が盛り上がっていました。そのときは、科学者会議の草創期でもありましたから、その活動の一環として公害反対運動に取り組みました。そこで様々な研究分野の人と一緒にチームを作って調査にいきましたが、そのときに私は物理の人に、「物理学の人たちはなぜもっと現場のことを研究しないのか」とかなり極左的なことを言っていました。これは決定的な誤りでしたが。それから建築や文学部の歴史をやっている人たちに、「そんな悠長な過去のことをやっていないで、なぜ現代のことをやらないのか」ということも言いました。しかしそれは間違いであると気づきました。やはり学問や全体の体系というのは、そのような局所的な目で見てはいけないわけです。だから私の「現場主義」はあくまで私の研究領域と結びついているのだということを、反省を込めてこのようなサブタイトルをつけました。