2.日本型ニュータウンの特徴と問題点
イギリスのニュータウンは、大都市からの職場と人口の計画的分散の受け皿として位置付けられ、時間をかけて漸進的に開発が進められた。これに対して日本のニュータウンは、むしろ高度経済成長期の大都市集中人口の受け皿として急速に開発された点が際立った特徴である。大都市に集中する都市機能を都心地域や既成市街地から必ずしも分散させることなく、労働力人口(だけ)をニュータウン開発によって受け止めようとする大都市成長型の開発コンセプトが、日本型ニュータウン計画の基本原理だったのである。したがって、職場・人口の計画的分散のための漸進的な職住一体的都市開発をイギリス型の「ニュータウン計画」というなら、大都市集中人口の受け皿に特化した日本型ニュータウンの住宅都市(団地)が「ベッドタウン計画」だと称されたのもうなづける。
こうして高度経済成長期に計画された日本型ニュータウンは、若年家族の集住地域という特異な人口構造を当初段階から付与されることになった。大都市への若年層を中心とする急激な人口集中を受け止めるためには、若年家族向きの小規模住宅を大量かつ集中的に建設する必要があったからである。その結果、初期ニュータウンの人口構造は、若い親世代と子ども世代に人口が集中する「蛇が卵を2つ飲んだ」ような2極型の年齢構成になった。現在、わが国では戦後ベビーブーマーである団塊世代のリタイア後の動向に全国的な関心が寄せられているが、日本型ニュータウンは、この団塊世代を集中的に受け入れることによって生まれた住宅都市だったのである。その意味で、当面するニュータウンの団塊世代問題は日本型ニュータウンの宿命であり、またその必然的結果であるともいえよう。
とはいえ、その後において家族の成長にともなう転出・転入というニュータウン内外の住民移動がスムーズに展開していれば、ニュータウンの団塊世代問題も時間の経過とともに次第に解決に向かったであろう。だが事態は、当初入居世代(主として団塊世代)がそのまま定着する方向に進んだのである。居住者の転出動機を鈍らせた原因としては、日本企業社会の終身雇用制度に基づく安定的な職場の継続状況が従業員や労働者に住宅移動の必要性をさほど感じさせなかったこと、また一般市街地に比較してニュータウンの居住環境が格段に優れており、また家賃水準が相対的に低廉であったことなどが挙げられる。唯一問題だったのは極端な住宅の狭さだったが、それも親世代が残り、子ども世代が出るという方法でなんとかクリアーされた。こうして日本型ニュータウンはいま、団塊世代の当初入居世代がそのまま一斉に高齢化するという時期を迎えたのである。