まちづくりの到達点と地域革新運動 全5P
広 原 盛 明
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2.「まち」のイメージ
  これは必ずしも確立された学説だとはいえませんが、私は「まちづくり」という言葉には3つの本質的な意味・契機が含まれていると考えています。第1は、「まち」を市民・住民の物的な生活空間の意味として把握すると同時に、その中で営まれる地域社会・コミュニティとしても理解し、これらの統一概念として「まち」をとらえようとしていることです。同様の言葉に「街」「町」という言葉がありますが、私はわざわざ平仮名の「まち」を使っています。これは従来の都市計画がハードな都市計画であり、もっぱら「ハコモノ」づくりの計画であったのに対して、「まち」はハードな生活空間とソフトな地域社会・コミュニティの統一体でなければならないと思うからです。いわば、生活者視点からの都市観・都市像の芽生えがこの言葉の中にみられるといえるのです。

  「まちづくり」を円滑に進めるためには、目標としての「まち」のイメージが明確であり、かつそれができるだけ多くの市民・住民に共有されていることが必要です。例えば、都市周辺の丘陵地ひとつをとってみても、それを宅地造成やゴルフ場の開発適地とみるか、それとも自然レクリエーションや環境教育のフィールドとみるかは、市民・住民の「まち」のイメージによって大きく異なります。同じように、年代ものの建築や古い町家が集積している中心市街地をは、これを経済活動や商業活動にとって効率の悪い土地利用だとみるか、それとも「まち」の遺伝子・DNAが蓄積されている掛け替えのない歴史的資源とみるかによって、その利用価値は全く正反対の方向になるでしょう。

  生活空間とコミュニティの統一体としての「まち」は、空間構成と規模そして地域社会の人間関係の両面において市民・住民にとって好ましく感じられるヒューマンスケールの都市のことです。「職住遊学」という言葉があるように、都市生活は「働く」「住む」「遊ぶ」「学ぶ」の4つの基本要素から構成されています。この4つの基本要素が土地利用の上でも施設構成の上でもバランスよく配置され、かつそこでの地域住民の社会関係が安定的に維持されているような都市が、市民・住民にとって暮らしやすいと感じられる「まち」なのです。もちろんこれらの基本要素を一定水準で確保しようとすると、それを可能にするだけの人口が必要となります。人口は都市の規模を決定する最も基本的な指標ですが、これまでは「人口は大きいほどよい」とする「スケールメリット」の考え方が支配的でした。しかし最近では、「まち」の適正規模という考え方が再び見直されるようになり、例え大都市であろうともこれを幾つかの適正規模に分節化して住民の生活空間・コミュニティとして再編しようという考え方が有力になってきました。

  このように「まち」を調和と均衡のとれた市民・住民の生活空間・コミュニティとしてみようとする都市観は、経済成長と経済効率を第一義的に重視してきたこれまでの「成長型都市計画」(近代都市計画)の価値観とは質的に異なり、都市の経済活動を都市空間と調和する範囲内で制御しようとする「成長管理型都市計画」(現代都市計画)の思想に近い性格を持っているといってよいでしょう。