6.自治体の使命は住民の生命と暮らしを守ることだ
同様のことは役場が冠水した大江町でも起こった。もともと大江町の役場は高台にあったのだが、宮福線(KTR)の開通と駅の設置にともなって由良川に近い現在位置に移転したのである。役場の移転に関しては、すでにその当時から強い反対意見があったという。由良川の水害を懸念してのことである。だがここしばらくは大水害もなかったことから、駅前地区の整備計画の一環として役場の移転と新築が決定されて現在の姿になった。それが今回の由良川の氾濫で1階がすべて冠水し、防災無線を含めて多数の機器が水に浸かって完全な機能停止状態に陥ったのである。あっという間の出来事だった。
当時刻々と水位が上がってくる中で、職員たちは停電で暗闇となった庁内でローソクや懐中電灯の明かりを頼りに必死で書類を2階に運んだという。だが、庁内には肝心の町長も幹部職員もその姿はなかった。町長は役場を出たまま連絡が取れなくなっていたのである。聞くところによれば、自宅の雨戸を閉めに帰ったが思わぬ出水のためそのまま役場に帰れなくなったのだそうだ。こうして防災無線も通信機器も機能せず、指揮命令系統もないままにいたずらに時間だけが過ぎていった。これが大江町役場の実態だった。
自治体の使命は住民の生命と暮らしを守ることだ。京都府の言いなりになって市町村合併に狂奔するだけが能ではあるまい。住民の反対を押し切って市町村合併を強行しようとする町長が緊急時の自分の無能さと無責任さを棚に上げ、リコール請求署名を持ってきた住民代表に「災害時にこのような行動に出たことは非常識だ」と非難するとはいったいどういうことか。この本末転倒ぶりこそが、今回の風水害を大災害にした根本原因であることは誰も否定できないだろう。
唯一の救いは各地から駆けつけたボランティアだった。京都府内からも個人・グループ・労働組合・政党・団体などが挙って救援活動にあたった。役場が機能麻痺を続ける中で地域やコミュニティを守ったのは、このような地区住民と手を結んだ有意の人たちだったのである。