広 原 盛 明
1/6P
1.はじめに〜問題の本質と核心はなにか

  2004年10月20日、京都府・兵庫県北部を含め日本海地方の中山間地域一帯を襲った台風23号風水害は、半世紀前の1953年大水害・「28災」(昭和28年に京都全域を襲った台風13号による風水害)に匹敵する大災害となった。いうまでもなく1953年の大水害は、終戦直後から相次いで発生した全国各地の台風災害(占領当時、台風名は例えば「ジェーン台風」などアメリカ女性の名前を使っていた)と同じく、戦時中の山林乱伐と治山治水工事の放置がその原因だった。それは現象的には自然災害であったが、本質は戦災そのものあるいはその後遺症に他ならなかった。

  だが、今回の台風23号風水害は少し事情が違う。それは「28災」からすでに半世紀を経た21世紀初頭の現在、世界に冠たる「土建王国日本」において発生した広範な農山村地域を巻き込む大災害なのである。戦後半世紀にもわたって湯水のごとく土木事業予算を注ぎ込んできた日本において、なぜいまかくも大規模な災害が引き起こされるのか。その真の理由を考えることなしには、今回の風水害もまた自民党族議員や地元ボスなどによる目先の土木予算の分捕り合戦に終わるだけだ。

  私は、今回の風水害の原因として、異常な降雨量や出水量に基づく堤防の決壊や山崩れなど土木関連ハード事業の問題点を無論指摘しなければならないと思う。しかしより本質的な問題の所在は、住民の少子高齢化に基づく地域コミュニティの弱体化と崩壊ならびに地域・自治体の防災体制の破綻にあるのではないか。またその背景には、住民の反対意見を押し切って市町村合併が強行されていくように、住民自治と地域民主主義の破壊にともなう自治体首長や職員の激しいモラルハザード(倫理荒廃)の進行があると考えている。

  当面の復旧対策は土木事業中心になるだろう。災害の原因を土木工事の不備だけに求めるとすれば、復興対策はいきおいハード事業をやればよいということになる。だがしかし、地域コミュニティの弱体化や過疎自治体の機能不全さらには自治体行政のモラルハザードまでを視野におさめるなら、ことは単なる土木復旧工事では終わらないだろう。京都府北部を襲った台風23号風水害問題の本質と核心がここにあるのである。