東大阪市における同和事業の終結に向けての意見書(抜粋)
1999年11月21日、東大阪市同和行政研究会が「本市における同和事業の終結に向けて、現状を分析し、実態を踏まえて考え方を整理するとともに、今後の方向性、課題等について研究するため」(設置要綱)設置されました。長尾淳三市長(当時)から委嘱された研究会メンバーは、杉之原寿一(会長:神戸大名誉教授)、真田是(副会長:立命大名誉教授)、石川元也(弁護士)、梅田修(滋賀大教授)、広原盛明(龍谷大教授)の5名です。
研究会は、要綱実施当日の第1回を皮切りに、翌年8月16日の市長への意見書提出にいたるまで15回にわたって集中的に開かれました。年末も夏休みもない異例の集中討議でした。こうしてまとめられたのが、『東大阪市における同和事業の終結に向けての意見書』(以下、意見書という)です。意見書の目次構成と執筆分担は、第1章、総論(杉之原・広原)、第2章、住宅・環境対策(広原)、第3章、保健・福祉・医療対策(真田)、第4章、産業・就労対策と公的施設・経営体の管理運営(石川)、第5章、教育・啓発対策(梅田)です。
だが、この研究会は決して順調に進んだわけではありません。むしろ難行に次ぐ難行の連続でした。その最大の原因は、担当事務局である人権文化部同和対策室の激しい抵抗でした。研究会の作業に最も協力的でなければならない担当部局が、私たちが要求する資料を言を左右にしてなかなか出そうとしないのです。「現状を分析し、実態を踏まえて」議論しなければならない研究会なのに、その肝心かなめの行政資料・調査資料がなければ話になりません。「市長の委嘱を受けて設置された研究会にどうして資料を出さないのか」と同和対策室長に激しく詰め寄ったこともあったほどです。また現場視察もきわめて限定されました。同和地区の施設や改良住宅の利用実態について現場で関係者に直接質問をしたかったのですが、それも叶いませんでした。
研究会において全ての資料が提供されたとは到底言えないでしょう。意見書は限られた資料に基づいて書かれたものです。にもかかわらず、この意見書はきわめて価値あるものだと断言できです。なぜなら、これまでは東大阪市の同和行政が「乱脈きわまるもの」と外部から批判されることはあっても、行政資料(非公開資料も含めて)に基づいて「内部」から客観的に実態解明されたことは一度もなかったからです。人口50万人を超える東大阪市で、このような意見書が公表されたことの意義はいくら強調しても強調し過ぎることはありません。東大阪市の同和行政の暗部に初めて「メス」を入れた実態報告書であり問題解明書であるところに、この意見書の真価と真骨頂がある
のです。
全国自治体の同和行政についても同様のことがいえます。自治体における同和行政の実態は軒並み分厚いヴェールで覆われています。一般市民が情報公開請求をしても、「差別を助長するおそれがある」とか「プライバシー保護」などという表向きの理由で、ほとんどが門前払いされるのが落ちです。同和行政が「密室行政」であるところに解同や同和団体との癒着関係が生まれ、同和利権が横行する根本的原因があるにもかかわらずにです(それだからこそ何としても隠蔽しようとするのでしょう)。ですから逆にいえば、情報公開を徹底して全ての事実を明るみに出すことが、このような癒着関係や同和利権を根絶する唯一の方法であることは確かです。
しかし、このことはきわめて困難です。これまで数々の不正乱脈の事実が発覚してきた京都市・大阪市・福岡市・北九州市など政令指定都市の同和行政に関しても、住民訴訟等によって一部が暴露されることはありましたが、全体的な解明は皆無なのです。私が京都市長選挙で公約した「独立司法調査委員会による徹底究明」といった事態でも実現しない限り、国費も含めて10兆円にも上る全国自治体の同和行政の実態はこれからも「闇から闇へ」と葬られていくことでしょう。
それからもう一つ、この意見書の公表に際してマスコミの取った反社会的態度についてどうしても書かなければなりません。東大阪市にも記者クラブがあり、主要各社は全部そろっています。それが意見書について記者発表したにもかかわらず、各社とも一行たりとも書かないのです。意見書で指摘されている驚くべき同和行政の実態は、東大阪市民はもとより全国民にとっても衝撃的なニュースであるはずです。ところが、各社は意見書を完全に黙殺しました。「解同タブー」がこれほどにまで浸透している有様を見て、なぜ解同が同和行政を牛耳り、堂々と不正行為をはたらくことができるかが分かりました。彼らは「何をしてもマスコミに書かれることはない」と安心しきっているからです。
私はこのような事態を(悲しいことですが)ある程度予測していたので、念のため意見書をマスコミ各社(大阪本社)に直接送りました。だが、これも徒労に終わりました。また監督官庁である建設省や会計検査院にも(大阪府が意見書を握りつぶすことが予測されたので)不正事実を知らせるために送付しました。しかし組織的には何の反応もなく、ただ個人的な知り合いの課長から嘆きとも言い訳ともつかない返事をもらっただけでした。政府機関の中ですら「解同タブー」が根強いのでしょう。
いまマスコミでは、大阪と全国の同和食肉事業協同組合連合会を舞台にした解同がらみの「ハンナン事件」で持ち切りです。暴力団と深いつながりを持ち、数々の利権汚職にまみれた「食肉の帝王」が数十億円に上る補助金を詐取した牛肉偽装事件です。この事件はすでに数年前から心あるフリージャーナリストによって徹底的に解明され告発されていたものですが、マスコミは首謀者が逮捕されるまでいっこうに取り上げようとしませんでした。そして現在時点でも「解同がらみ」の事件であることの究明はなお不十分です。
このような状況の下では、意見書の内容を社会的に広げる努力が不可欠です。私が意見書をホームページに掲載するのは、「同和行政が終結した」と流布されている現行世論に対して「隠された実態・真実」を知らせるためです。解同推薦の市長が当選したその後の東大阪市はもとより、解同の強い影響下にある京都市など全国自治体では、依然として「人権行政」という名の同和行政が続けられているからです。そこでは同和行政が「利権行政」へと大きく変質しているからです。
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