11月16日:大阪市長選、京都市長選の混迷(大連立騒動の波紋、その3)

 大阪市長選挙終盤の世論調査によれば、各紙とも民主党候補の優勢を伝えている。結果は、私にとって非常に意外だった。まるで小沢代表の大連立騒動の波紋などなかったかのような気配なのだ。国政レベルの世論調査では、小沢代表が大連立に走ったのも、また反対されて民主党代表に出戻りしたのも、いずれも「ノー」とういう結果がはっきりと出ているにもかかわらずにである。

この世論調査結果は、自公陣営にとっても意外だったらしい。急遽、党幹部や国会議員にも動員がかかっている。わけても異常なほどの危機感で選挙応援に臨んでいるのが、公明党・創価学会だ。通常の選挙では、池田会長自身が応援に来ることなど滅多にない。「大物ぶり」を示すためだ。浜四津代表代行(女性委員長)が出てきて女性部隊の尻をたたくだけで充分なのである。それが池田会長が大阪までわざわざ出て来て、学会員を叱咤激励したのだというのだから尋常の事態ではない。いったい何が起こっているのだろうか。

原因は、やはり大連立騒動の波紋だろう。自民と民主が大連立すれば、公明党は捨てられる他はない。事実、小沢氏の方からは大連立の条件として、「公明党を外せ」との要求があったと伝えられている。これは公明党・創価学会にとっては驚天動地の出来事だった。福田首相は一応断ったというが、小沢代表はその後も大連立を否定していないので、いつまたこんな「公明党外し」が再燃しないとも限らない。この芽を摘むにはどうすればよいか。それは自公連立の首長選挙で、公明党・創価学会の底力を自民党に嫌というほど見せ付けることだ。

大阪は、昔から公明党・創価学会の牙城だった。選挙時に大阪府下の市営住宅や府営住宅の団地に行くと、窓という窓には公明党のポスターが所狭しと張り出されている。市営住宅団地や府営住宅団地は、事実上、創価学会の根城になっているのである。最近では、団地自治会が創価学会メンバーに完全に牛耳られているケースも珍しくない。とりわけ学会婦人部(女性部)の組織が強力なのだ。

こんな「学会団地」では、学会婦人部による「助け合い組織」が至るところ(各棟各階)に根を張っている。独り暮らしのお婆さんなどは、もはや民生委員の援助だけでは生きていけない。身近に居る学会員(それも中年女性)の手にすがらなくては、日々の生活がままならないところまで追い詰められているのである。独居老人が日常的に学会員のお世話になるようになると、抵抗できなくなるのは当然だ。言いつけ通り、支持される候補者に投票することになるのである。

不在者投票制度が簡易化されてから、期日前の投票数が急増した。便利になったので投票率が上がったと一般的には思うだろう。そういう面もあるが、大半は創価学会と公明党による組織的投票動員のたまものだ。従来は、投票日に自動車を連ねて投票動員をかけていた。だがその光景が「まるで拉致みたいだ」と批判されるようになったので、目立たないように不在者投票制度を利用するようになったのである。

大阪市の期日前投票率の推移をみると、年々投票率が上がってきているのがはっきりと読み取れる。公営住宅団地の集中している行政区や低所得層の多い地域で急増しているのが特徴だ。いずれも公明党議員や推薦候補の得票数と比例している。かっての「地域ぐるみ選挙」は自民党の得意技とするところだったが、最近の「地域ぐるみ選挙」は例外なく公明党の手練手管になった。

公明党・創価学会が今回の大阪市長選挙にかけるエネルギーや運動量の凄まじさは、通常の首長選挙の域をはるかに超えるものだ。従来のオール与党の一員として行動していたときとは、比較にならないほどの執念と態勢で取り組んでいる。それは一にも二にも自民と民主の大連立の芽を摘むための政治総力戦だといっていい。だから、投票日直前にはどんな情勢になるかわからない。民主党候補の優位など一瞬のうちに吹っ飛んでしまうかもしれないのである。

その意味で、今回の大阪市長選は今後の大連立の行方を占う国政レベルの前哨戦になった感じがする。大阪市長選挙は長年「大連立」で推移してきたが、小沢代表の選挙戦術で「自民・民主2大政党制」を演出する方向へカーブを切ったと思いきや、その実は「自民民主大連立」と「自民公明連立」と対決局面に転じたといえるだろう(続く)。
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