11月10日:大阪市長選、京都市長選の混迷(大連立騒動の波紋、その2)

 解同問題に発する大阪市政の病根は、まるで「全身が癌で冒されている」といってもよいほどの深刻なものだ。それは何よりも、市職員と一体となった飛鳥会小西某による巨額の公金横領事件に象徴されるように、少なくない管理職が解同の意のままに操られ、「同和行政」という名で彼らの利権を長年放置し続けてきたことにあらわれている。また最近では、関市長自身が衛生局長時代に旧芦原(同和)病院の巨額の不当貸付に関わり、形ばかりの処分でことを済ませようとしたことに対して、民間人から選ばれた検察審査会が「起訴相当」の議決を行った。これほどの重大な背任行為を検察が起訴しないのは不当だと、市民が改めて意思表明をしたのである。

 現職市長が同和行政の責任に関して検察審議会で「起訴相当」を議決されるなど、不名誉極まりないことだと言わなければなるまい。ましてそんな人物を市長候補に担ぐことなど、政党としては自殺行為そのものだ。だから自民党がいままで推薦を渋ってきたーーー、ということならまだしも救いがあった。

ところが聞くところによれば、自民党が関氏の推薦を保留してきた本当の理由は、同和利権に対する批判などではさらさらなく、大型開発に基づく3セクの赤字問題等を処理するために市長が設けた「市政改革推進会議」のやり方が「議会無視」だということにあったらしい。長年にわたって議会を牛耳り、市当局と一体となって同和行政や大型開発を推進し、市民が負担しきれないほどの巨額の赤字を積み上げてきた張本人の政党会派が、自らの政治責任や自浄能力の欠如を棚に上げて当局を批判しているのだから、これでは開いた口がふさがらないというものだ。

しかし一方、この「市政改革推進会議」なるものの実態をみると、これで果たして「市民のための市政改革などできるのか」というメンバーの勢揃いだからさらに驚く。委員長をはじめほとんど全員が「ネオコン」系の学者と民間企業経営者で占められ、「市政改革とは公共資産を売却して民営化すること」といった方針で一致するメンバーばかりが選ばれているのである。

これらメンバーによる「市政改革」とは、市民の血税を投入して建設された大型開発施設(大阪南港のWTC・大阪ワールドトレードセンター、ATC・アジア太平洋トレードセンターなど枚挙の暇もない)が例外なく「赤字の塊」と化しているので、その解決策として民間企業に「投げ売り」することで赤字を減らせばよいというごく単純な話なのだ。事実、市交通局の土地信託事業で経営破綻した遊園地「フェスティバルゲート」などは、都心部の一等地でもあるにかかわらず、簿価の20分の1という破格の低価格で民間に売却される計画だという。

与党会派議員の多くは、これら大型開発事業が計画され実施に移される段階で、建設業者への斡旋とか行政への口利きとかいったことで散々「うまい汁」を吸ってきた。そして今度は、その民営化や売却話でももう一度「うまい汁」を吸おうというのである。だから「市政改革推進会議」が市議会や与党議員をそっちのけにして話を進めるのは困る、というわけだ。「自分たちも分け前に加わりたい」というのが本音なのである。

だが、彼らにもやはり市民の眼は怖い。いくらなんでも本音を露骨に出すわけにはいかないのである。そこで「市政改革推進会議」に表向き荒療治をやらせて、市民の批判の眼をそちらに向けさせ、自分たちはこれまでの責任を頬被りしたままで「分け前」に与ろうとする。それが今回の関氏推薦の前提条件であり、裏取引の実態だったのである。

しかし前交渉は相当難航したようだ。そこで業を煮やした一部の自民・公明議員が別候補の擁立に動いた。その御眼鏡にかなったのが、以前から立候補への並々ならぬ意欲を見せていた橋爪紳也氏だった。大阪出身の都市学者であり、年齢も若く、容姿端麗で弁舌も爽やかな同氏を担げば、関氏とは対照的なキャラの市長候補を売り出せると踏んだのであろう。それに政治経験が未熟なことも「御しやすい」と見えたらしい。ただし条件は、民主党とは組まない(解同とは手を切る)ということだった。同和利権は「もう金にはならない」社会状況になってきているからであり、また公共施設の売却や民営化の際にネックとなる市職員との関係を断ち切りたかったからだ。

橋爪氏は現在、政党とは一線を画した「市民派候補」として選挙戦で動いている。でも「市民派」と「無党派」とは別の概念だ。「市民派」だからといって、その政策を支持してくれる政党があれば、政党の支持を拒むことはない。だから橋爪氏が前以って自らの政策を公表し、それを自民・公明が支持してくれるのであれば、支持政党をバックに闘うこともできたはずだ。だが実際は、政党側からの働きかけが最初にあり、橋爪氏が政党の組み合わせに応じた政策をつくり、政党推薦を要請する手筈でことが進んだ。

ここまでは橋爪氏にとっては順調だった。だがギリギリの段階で、自民・公明両党と関氏との間で交渉がまとまった。この種の交渉とそれに基づく選挙公約は、プロの間では表と裏の「二枚重ね」というのが常識だ。有権者には公開されない「裏取引」があるのが通常の姿なのである。今回の場合、それがどんな中身なのかは有権者の眼には見えないが、関氏が当選すれば、「市政改革」を実行する段階で次第に明るみに出てくるだろう。

橋爪氏は、気の毒にも最後の土壇場になって政党に「ハシゴを外された」。だから彼が選挙戦でいくら「市民派」を標榜し、どれだけ政党をこき下ろしても、それは「結果市民派」候補にすぎないのであって、本来の「市民派」とはいえないだろう。候補者の志が高くなければ、結果として政党から見棄てられるという見本だろう(続く)。
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