11月5日:大阪市長選、京都市長選の混迷(大連立騒動の波紋、その1)
ここ当分は、大学のことや身辺雑話的なことを中心に書くつもりだった。政治学の専門家でもないのに、国政レベルのことをあれやこれやと論じることに、いささかの不安を感じていたからだ。もちろんこれまで書いてきたことが「素人談義」の域を出ないことは、百も承知しているのだが、それでも見当はずれのことを書いて、要らぬ混乱を巻き起こすことは避けなければならないと思っていた。だから「当分はしばらく慎もう」と考えていたのである。
しかしこの2、3日、政界を揺るがすような大事件が次から次へと頻発するようになると、「何か書きたい」という気持ちを抑えきれなくなった。そこで、昨日が告示の大阪市長選と目下水面下で激しく動いている京都市長選に焦点を当て、今回の「大連立騒動」がどんな波紋を描いているのかをみてみようと思う。
すでに舌戦の火蓋が切られている大阪市長選は、いったい何が争点なのか、各候補者は誰の支持を受けて闘っているのか、大阪市政と国政はどう絡んでるのかなど、新聞報道だけではなかなかわかりづらい。これまで「オール与党体制」すなわち「大連立」を整然と組んできた自民・公明・民主の各党が、今回ばかりは直前まで支持候補が決まらず、現在は敵味方に入り乱れて闘っているのだから、有権者はさぞかし戸惑っていることだろう。
大阪市長選が「大連立」の下で進められるようになったのは、昨日や今日のことではない。1971年(昭和46年)に現職の中馬馨氏と対抗馬の桑原英武氏の一騎打ちになって以来、前回の2003年(平成15年)まで実に11回、30有余年にわたって、「大連立」が続いてきたのである。この間、一方の雄だった社会党が消滅して民主党や社民党などに分裂したが、市長選挙における「大連立」だけは一貫して変わらなかった。それほど大阪市長選における大連立体制は、強い生命力を持ち続けてきたのである。
ところが今回の市長選は、従来からの大連立体制を維持できなくなった内外2つの理由があった。内部理由としては、「大阪市政の宿痾」(しゅくあ:不治の病に至る長い病気、業病)ともいうべき部落解放同盟問題(解同問題)が、もはや「大連立」の覆いでは隠蔽できないほどの大きな政治的矛盾となってきたからである。同和利権と腐敗の塊である解同の実態が暴露されるにつれて、さすがの自民党もいままで馴れ合ってきた(解同丸抱えの)民主党とは、市民の前で公然と手を握ることが難しくなってきた。また自民党の政治基盤である一般の建設業者が、同和系建設業者との間で公共事業の縄張り争いが激しくなるにつれて、「解同丸抱えの民主党と組むのなら自民党を応援しない」との声を上げていることも大きく響いている。
一方の民主党の側にも、自民党と一緒に関市長に相乗りできない事情が生じていた。世論に圧されて関市長が「同和行政の見直し」を掲げたからである。これまでは好き放題の要求をして、その上に胡坐をかいていた解同や市職労幹部の要求がそのまま通らなくなった。これまで「窓口一本化」という口実で、解同が独占してきた同和地区施設や改良住宅の利用管理も、そのまま独占し続けることが難しくなった。「同和利権」の源泉がだんだん狭められてきたのである。
加えて、解同を組織的に支えてきた市職員への採用が難しくなってきた。実態として解同推薦の採用枠が少なくなり、若手職員のリクルートがうまくいかなくなってきたのである。市職労に対して解同の影響力を持ち続けるためには、同和地区出身者の市職員への補給路は欠かせない。大阪市が政令市のなかでも突出した職員数を抱えているのは、市職労自体の体質もあるが、解同の圧力によって一貫して選考職員の数が増え続けてきたことの影響も大きい。
率直に言えば、「このままでは、関市長を支持できない」、「同和行政を復活させなければ、推薦できない」というのが、解同に乗っ取られた民主党の偽らざる内部事情であろう。民主党が「独自候補」しか担げなかった最大の理由は、実はここにあるのである。
一方、外部理由のほうは、小沢民主党代表が「知事選と政令市市長選は相乗りしない」という原則を打出したという、自民党との「対決姿勢」の演出がある。「次期総選挙で政権を取る」というのが、少なくともこれまでの小沢代表の公約だったから、その前哨戦とも言うべき市長選で「野合」することは許されない、という論法は一定の説得力を持つものだった。
まして、民主党が大勝した参議院選挙直後の大阪市長選である。「自民党との対決」を叫んだ舌がまだ濡れているというそのときに、市長選で自民党と堂々と相乗りするのはさすがの民主党も気が引けるというものだ。これまでは「国政と地方政治は事情が違う」といってきた詭弁ももうそろそろ通じなくなる、そう思い始めたのが今回の市長選だったのだ。
ところが皮肉なことに、大阪市長選の告示日に合わせたかのように、小沢代表が「大連立」が不調に終わったことを理由にして辞意を表明すると言う事態が発生した。民主党の勢いと小沢氏の応援を当てにして、「解同隠し」の戦術を展開しようとしていた民主党陣営は大打撃を蒙った。一方、このニュースを聞いた自民党集会では拍手が5分間も続いたと言う。(続く)