12月19日:「まち歩きの駅」のゼミ提案

 「道の駅」という幹線道路沿いの人気施設がある。旧建設省の道路建設事業のなかでも久しぶりの「ヒット作品」とされている事業だ。ドライバーが休憩する道路関連施設のひとつだが、高速道路のサービスエリアのような単なる休憩施設ではない。地方自治体の地域起こしの一環として取り組まれ、国が補助する「休憩」・「情報発信」・「地域連携」の3つの機能を併せ持った多目的施設だ。

食堂のメニューや土産物売り場一つを取ってみても、地元の食材や特産品を活かした品揃えが豊富で見ているだけでも楽しい。定期的に朝市で新鮮な魚介類や野菜・果物を売っている駅も沢山ある。廉価な地場産の工芸品の売り場を設けているところもある。道路公団のファミリー企業に独占されているサービスエリアの画一的な運営と違って、農協や観光協会、物産会など地元組織の手に運営がゆだねられているので特色あるサービスが提供されているのである。

なぜこんな話を持ち出したかというと、実は12月17日に開催された恒例の龍谷大学法学部政治系ゼミの合同討論会において、私のゼミが「目覚める木屋町〜昼から夜を変えるまちづくり〜」というテーマで発表参加し、そのキーワードが「まち歩きの駅」だったのである。いったい木屋町の再生と「まち歩きの駅」とはどんな関係があるのだろうか。

地元の立誠小学校の閉校を契機にして性風俗店がモグリも含めて100件近く出店し、京都市の繁華街・木屋町がいま存亡の危機に直面していることはすでに何回も日記に書いた。これまで性風俗店の進出から地域コミュニティを守ってきた守護神としての小学校を安易に廃止し、あまつさえ一片の教育的機能すら残す配慮もしなかった京都市教育委員会の大失態は万死に値するというものだ。しかもその時の教育長がなんと現市長なのだから、京都市民として情けないこと限りない。

しかし事態が深刻さを増すにつれて地元住民からの批判も厳しさを増し、京都市でも立誠小学校の校庭を高倉小学校の校庭に指定するなど遅まきながら対応を始めた。また最近になって東京新宿の歌舞伎町や大阪ミナミの宗右衛門町などで性風俗店取り締まりが強化されるようになり、京都府警でも移動交番の設置や特別取り締まり体制の確立など漸く動きがみられるようになった。目下、露骨な街頭での客引き行為がやや沈静化しているのはそのためである。

だが、取り締まりの強化だけで性風俗店を閉店に追い込むのは難しい。「需要」がある限り、この種の店を根絶することは不可能だからだ。そこで私のゼミでは「まちづくり」の視点から、どうすれば性風俗店を減らせるのか無くせるのかについて知恵を絞ることになった。そのとき学生たちから出てきたアイデアが、木屋町に「まち歩きの駅」をつくって観光客を呼び寄せ、木屋町を「夜の街」から「昼の街」へ変えていこうというものだった。

目からうろこが落ちるようなすばらしいアイデアではないか。京都へくる観光客にはリピーターが多い。とくに最近では少人数で訪れる中高年観光客の「まち歩き観光」が増えてきている。若い人たちの間でも人気が出てきている。物見遊山型の団体旅行が急激に減ってきているのである。しかしこの「まち歩き観光」をお世話するところがない。また案内所や休憩所もないに等しい。いろんな観光アンケート調査でもそれに対する不満ははっきりと出ている。将来は京都中に「まち歩きネットワーク」を張りめぐらし、その拠点としての「まち歩きの駅」を設置する。そしてその第一歩として木屋町に第1号駅を設けるという提案だ。

「まち歩きの駅」の場所は立誠小学校の建物や校庭を利用する。そこには学生や京都通のガイド・「京都まち歩き観光コンセルジュ」がいる。まち歩き観光のための地図やパンフなど道案内の資料も揃っている。教育的機能を持たせる意味からも各種の歴史資料室もある。休憩したり食事したりする部屋もある。校庭にオープンカフェもあれば、フリーマーッケトやイベントの場所もある。ちょっとしたお土産物のコーナーもある。地元住民が将来まちづくりのための「タウン・マネイジメント・オーガニゼーション」(TMO)を設けるための場所も取ってある。ざっとこんなイメージだ。

こんな「まち歩きの駅」を木屋町に設置することによって、木屋町を訪れる人の種類や時間、人の流れがガラリと変わるだろう。まち歩き観光の時間は主として昼間である。もちろん「夜のまち歩き観光」があってもよいが、メインは昼の時間だ。だから昼の客が木屋町の「まち歩きの駅」に数多く訪れ、またそこから市内の各地に散ってゆくようになれば、木屋町は昼の客向けの店やサービス営業に変わることは請け合いである。性風俗店に貸している現在の店を再び「昼の店」として取り戻すことは決して不可能ではない。

この提案は単なる空想でも思いつきでもない。れっきとした市場原理に基づく木屋町の再生プランである。この提案の優れているところは、将来の京都観光のあり方を先取りしていること、その拠点第1号を立誠小学校で実現する条件があること、そのプロジェクトが木屋町全体の体質改善の契機になること、そして経済的にも市場的にも実現可能な提案であることだ。

広原ゼミの学生たちの発表は新鮮な共感を呼んだ。そして昨年に引き続き連続優勝とまではいかなかったが、白石ゼミに続く第2位の栄冠を獲得した。午前9時からはじまった発表と討論は午後6時まで続き、引き続いて午後8時まで講評や表彰が行われた。その後さらに場所を移してゼミ独自の二次会を午後10時半までやり、それからまだ学生たちはボーリングに出かけて行った。この1週間ろくに寝ないで頑張り、ほとんどが風邪を引いて発熱しているにもかかわらずだ。彼・彼女らの物凄いエネルギーに圧倒されて、私はおとなしく帰宅した。これ以上付き合うことは、「身の危険」を覚悟しなければならなかったからだ。