10月20日:大阪市役所一家の崩壊
関・大阪市長が突然辞任した。しかし再出馬するために辞任するというのだから、
話しはややこしい。関さんは私の高校の先輩(天王寺高校)なのであまり悪口は言い
たくないが、これでは茶番劇もいいところだ。最近は劇場政治はやりだから、関市長
もそれに見習ったということだろうか。
だいたい今回の大阪市役所をめぐる数々の不祥事は関市長だけの責任ではない。そ
れは半世紀余りにわたって続いてきた助役出身の市長、オール与党議会、それに市労
連の三位一体の構造がつくりだした「宿阿」(しゅくあ:直らない持病)みたいなも
のだからだ。ヤミ年金、カラ残業、ヤミ専などは日常茶飯事のことだからばれるのは
仕方ないが、銀行や部落解放同盟を巻き込んでの3セク事業や同和行政をめぐる醜悪
な利権争いなどの本当の暗黒部分は新聞・テレビでもほとんど明るみに出ていない。
大阪と京都ではとくにマスメディアの「同和タブー」がひどいのである。僅かに浪速
区の芦原病院へ際限もなく注ぎ込まれた同和融資資金130億円近くが踏み倒された
事件が関市長の口から出ただけだ。もしこのことに関して関市長が本当に責任を感じ
ているとすれば、同和事業の総ざらいをするのが筋というものだが、そんな気配は毛
頭もない。大阪市役所の問題は三位一体の構造矛盾だから、もともと主役たちには自
浄能力がないのである。
といってその一方、当事者たちは総辞職して懺悔するつもりなどさらさらないの
で、自分(たち)だけは残って何とか今のオイシイ立場を維持しようとする。そうな
れば、だれか外部から人を呼んできて適当に処方箋を書いてもらい、後は市民の関心
が薄れるのを待つだけだ。大阪市が外部から有識者を起用して改革に当るという方針
を打ち出したのは、きっとこんな思惑が横たわっていたに違いない。そしてその目玉
として登用されたのが本間・上山氏といったネオコン学者グループ、そして大向う受
けを狙った話題の女性弁護士・大平助役の起用だった。
しかし事態は当事者たちの思惑を超えて予想外の進展を見せた。それは大阪市役所
一家問題が小泉構造改革の柱である「大きな政府攻撃」と「公務員バッシング」に格
好の材料を提供したからだ。政令指定都市の中でも群を抜いた規模の(現業)職員を
抱える大阪市は、その仕事ぶりといい、待遇といい、叩けば叩くほど埃の出る自治体
だった。豊かな市税収入に恵まれているのをよいことにして、それらを市民に還元す
るのではなく、巨大なハコモノ事業と3セク運営(それに同和行政)に注ぎ込み、か
つ市役所一家全体で甘い汁を吸ってきたのである。
それからもうひとつ当事者たちにとって想定外だったのは、外部有識者が市役所一
家から要求されている以上に踏み込んだ行動に出たことだろう。それを象徴する事件
が、本間氏(大阪大学教授、小泉内閣経済財政諮問会議民間議員)の市役所顧問就任
と子飼いの学者の幹部登用の要求だった。そのときばかりは自分たちの懐に手を入れ
て掻きまわされるのはたまらないとばかりに猛然とした反発が強まり、権勢欲の塊と
いわれるさすがの本間氏も引き下がらざるを得なかった。しかしこの時の大平助役の
行動に今回の関市長辞任劇と大平助役退任の背景を解き明かす鍵がある、と私は見て
いる。
これは毎日新聞のスクープ記事だが、このとき大平助役は小泉首相秘書官の飯島氏
に直接電話をかけ、本間降ろしの了解を取ったと言う。私が驚いたのは、政府内では
飛ぶ鳥を落すと言われるほどの本間氏をいとも簡単に飯島秘書官が切ったこと、そし
て大平助役が本間氏よりも上位にあると飯島氏に政治的に認識されている事実だっ
た。物事を単純化して言えば、官邸内では大平助役が関市長の後釜だとすでに位置付
けられていたのではないか。そうでなければ、今回の総選挙で大平助役が出馬しない
はずがない。市役所一家体制のなかにどっぷりと浸かってきた関市長ではこれからの
市役所解体の荒療治は出来ない、出来るのは外部から起用された「しがらみのない」
大平氏だと言うわけである。
関市長もそのあたりの事情は気付いていたのであろう。「パート」として雇ったは
ずの大平氏が、いつの間にか自分を飛び越えて後継者席に座ろうとしているのでは心
中穏やかでないはずだ。このまま就任期間の4年間が過ぎれば、もはや自分の出番が
なくなると踏んだのであろう。だから市役所改革の答申がまとまった段階で乾坤一擲
の大勝負に出たと言うわけだ。しかしこの時も、大平助役は飯島秘書官に電話をかけ
て相談している(これも毎日新聞記事)。もちろん飯島氏も関市長の辞任には反対で
その意を受けた大平助役が辞任に反対したというが、関市長は応ぜず、両者の決裂は
決定的になった。各紙の新聞記事では電撃の辞任で対抗馬の出番を封じたとの表面的
な報道されているが、なぜ大平助役が退任の記者会見にも出ず、しかも関氏が再選さ
れた場合でも「大平助役の再任はない」と関氏が言明しているのかについては堀り下
げた分析がない。
だが、関氏の言動はその後激しく揺れている。市役所一家の既成勢力とは手を切
り、経済界と市民の手を借りて「手づくりの選挙運動をやりたい」と言ったかと思う
と、次の瞬間には一転して議会与党会派の自公民3党に協力をお願いすると言い、ま
たその次の場面では「協力要請はしていない」などと二転三転する始末だ。市役所一
家に頼る他がない関氏がそれを否定して、あたかも「市民代表」のような顔をして出
馬しようと言うのだから、もともとどうしようもない根本的矛盾があるのである。
これから選挙体制がどうなっていくかはわからない。しかし関氏が市労連の力を借
りないことだけははっきりしている。理由は明白だ。次の市長が誰になるにせよ、労
使癒着の根源になってきた市労連や部落解放同盟との関係を抜本的に解消しなければ
大阪市の将来がないからである。市労連や解同幹部の中には、選挙後の「お目こぼ
し」を期待して選挙運動に協力しようとの思惑があるらしいが、そんな密約がたとえ
成立したところで実行できるとは到底思えない。市役所一家体制は「ベルリンの壁」
と同じく、まさしく崩壊の歴史的瞬間を迎えたのである(続く。次回は「そして神戸
!」)。