つれづれ日記
9月25日

  京都市では、高校生以上の同和地区就学生に対する同和奨学金制度を1961(昭和36)年度から実施しているが、それが「給付制」から「貸与制」に変わった1983(昭和58)年度からは独自の措置として「自立促進援助金制度」を創設し、貸与者全員の返済金額を京都市が肩代わりしてきた。貸与世帯の所得水準を一度も調査することなく、奨学金貸与者全員を一律的に「生活難のため返還困難」と認定して「自立促進援助」を支給し、市民の税金を惜しげもなく注ぎ込んできたのである。

  このような異常極まる事態に対して、市民オンブズマングループの「市民ウオッチャー・京都」から、2002年11月、2003年4月、2004年6月と相次いで住民監査請求が出された。しかし不当にも監査委員から請求棄却され、現在は行政訴訟になっている。その公判が昨日24日の午後、京都地裁203号法廷で開かれた。幸いこの日は、京都市の担当課長(肩書は「文化市民局市民生活部人権文化推進課長」となっているので一見すると同和担当課長とはわからない)の証人喚問の日だったので、京都市(被告)側と原告側の代理人双方からの質問を通して担当課長の答弁を聞くことができた。

  全体的な印象としては、担当課長の答弁が聞くに耐えないほど矛盾だらけの連続で、かつ原告側弁護士の質問に対しては「過去の経緯はわからない」とのシドロモドロの対応だったことだ。たとえこの課長が2年半前から同和担当となった新米だということを割り引いても、これではお粗末という他はない。役所の課長職は「業務引継ぎ」を通してこれまでの行政施策が継続的に蓄積されていく重要なポストである以上、過去の経緯に精通していることがまず何よりも職責として求められるはずだ。それが「わからない」の連発とあっては、本当なら免職に相当するし、嘘なら充分に偽証罪に値するというものだ。

  具体的な中身に入ろう。問題の核心は、同和奨学金は生活困難で学資調達に支障のある学生への貸与奨学金なのに、なぜ1回も所得調査をしないで貸与者全員を「生活困難」「返還困難」だと認定して京都市が一律に「自立促進援助金」を支給し、しかもその支給・返還手続きまでを京都市が一括代行しているのか、ということにある。この点に関しては担当課長はあれやこれやと言ったものの、結局は奨学金制度を創設したころの同和地区の進学率の低さやその背景にある生活困難状況を繰り返すだけで、その後の所得水準や進学率の向上にもかかわらず、なぜ現在まで一律的な「自立促進援助金」の支給が続いてきたかについては一言も納得できる答弁をできなかった。解同など運動団体の「取れるものは取れ」「貰えるものは貰っておけ」という理不尽極まりない圧力に長年屈してきたからだ、とは口が割けても言えなかったからだろう。

  加えて驚いたのは、京都市のその後の対応ぶりだ。住民監査請求そのものは棄却されたが、さすがの監査委員もこの異常極まる事態は否定することはできず、「すべての貸与者を対象に支給に係る基準を定めること、客観的な証明に基づいて所得判定を行うこと」との意見を付した。京都市が「自立促進援助金制度」の要綱改定にやっと重い腰を上げたのは、この意見が出てからのことである。もしも住民監査請求がなかったら、京都市では未来永劫にわたって「自立促進援助金」の支給が続いていたのではないか。

  さらに驚愕すべきは、「自立促進援助金制度」創設以来、京都市がはじめて支給対象者の所在調査を行ったのは昨年5月以降のことだという事実だろう。しかし2003年現在、2387人の対象者のうち住民票で確認できたのは1598人、全体の2/3にすぎなかった。残りの1/3は「住所不明」だというわけである。また所在を確認できた者のうち過半数の852人は同和地区外に転出していた。京都市はこれら「住所不明の者」に対して現在も営々と市民の税金を投じているわけだ。そしてこれからも「返済を求めない」で京都市が肩代わりしていくとしている。理由は「現時点で返還を求めることは、実質的な給付制度であることを前提にして奨学金を受給し、将来の生活設計を立ててきた者に対して予測できない制度の不利益変更となり、奨学生の法的安定性を害するものになる」、「実際の事務手続きは京都市が行っているため、奨学生は卒業時点で返還手続きは完了したものと認識しており、卒業後20年間にわたって自立促進援助金の返還が続いていると認識している者はほとんどいない」からだという。

  自立促進援助金の返還が「奨学生の法的安定性を害する」など荒唐無稽なことをよくもヌケヌケと言ったものだ。市民の失笑を呼ぶ以外の何物でもないだろう。数々の個人給付や京都市職員への選考採用などによって、同和地区住民の所得水準が飛躍的に上昇しているのは周知のことではないか。事実、最近の「自立促進援助金制度」改定にともなう京都市の調査によっても、年収700万円を超える世帯が約半数に達していることが判明している。今日の新聞発表によれば、2003年の民間企業勤労者の年平均給与は444万円、6年連続で下落しており、家計はますます窮迫の度合いを深めている。年収700万円を超える世帯が「生活困難」「返還困難」であり、返還すれば「法的安定性」が害されるのであれば、平均的国民の生活安定性はどうなるのか。子どもたちの教育保障はどうなるのか。

  傍聴していて終始怒りを抑えることができない半日だったが、最後の方になって、京都市側代理人の「自立促進援助金がなければ高校中退率はますます増加するのではないか」との誘導質問に対しては、「そこまでいうか」と遂に切れてしまった。同和地区高校生の中退率は一般高校生の中退率よりも1桁高い20%近くに達している。「自立促進援助金」も含め、同和事業漬けで勉学意欲や進学意欲を失った子どもたちの高校中退の原因を、こともあろうに因果関係を逆転させて「自立促進援助金」の継続を主張しているのである。これでは、ますます同和事業に依存しなければ生きられない「同和トラップ・罠」に地区住民が落ち込んでいくはずだ。

  とはいえ、今日は大変勉強になった。かくのごとき不当な実態を白日の下にさらけ出した「市民ウオッチャー・京都」の各位に心からの敬意を捧げたい。そして、これからも機会を得て京都地裁にせっせと通いたい。