つれづれ日記
7月9日

  同じ選挙といっても、季節によってこれほどまで違うものか。昨日の午後、北野白梅町と銀閣寺交差点で西山登紀子さんの応援演説をしたときの率直な感想だ。京都市長選挙は酷寒の季節だった。候補者カーから手を振るだけで腕が痺れ、寒風の中の街頭演説では口許がこわばった。中でも記憶に残っているのが、肌を刺すような寒気の中での洛西・桂坂の夕方の街頭演説だ。人ひとりっこ見えない住宅地でマイクを握ったときなど、これで果して声や訴えが届くのかと思わずにはいられなかった。それでも選挙カーの運転手さんは、「家のなかで必ず聞いてくれていますよ」と断言する。まるで透視術でもマスターしているかのようだ。

  それにくらべて昨日の街頭演説はとにかく暑かった。おそらく車上では40度位はあったのではないか。1カ所僅か半時間足らずだったが、眼の前がクラクラするほど暑かった。だが道行く人々の表情は、やはり夏のほうが和らいでいる。建物や街路樹の陰に身を寄せながらキチンと話を聞いている。半年前の市長選挙の感覚が瞬時にして戻ってくるような錯覚に捕らわれた。

  私が西山登紀子さんを応援しようと思ったのは他でもない。少し前の日記でも書いたように、選挙期間に入ってからのマスコミ論調が「2大政党制」に向かって大きくシフトし、民主党支援の世論が操作的につくり出されているからだ。民主党は本当に自公政権の対抗勢力なのか。私はそうは思わない。京都市長選挙では「オール与党」の一員として現職候補者を推薦したときの民主党の言いぐさは、「地方選挙と国政選挙は別」というものだった。直前の衆議院選挙で「反自民」と言っていた手前、そういわないと恰好がつかなかったのだろう。だが国政選挙である今回の参議院選挙の政策をよく読んでみると、表向きのパフォーマンスはさておき、中身はそれほど大差がない。いわば「コップの中の嵐」を針小棒大に騒ぎ立てているだけだ。自公政権と民主党との間では、「地方選挙も国政選挙も大同小異」なのである。

  一昨日配布された選挙公報を開いてみよう。民主党京都選挙区候補者のマニフェストの項目として挙げられているのは、年金、環境、経済、地域、京都の5項目だけだ。「憲法」「自衛隊」「安保条約」もない。どの世論調査をとってみても、今回の国民の最大関心事は、年金問題と自衛隊の多国籍軍参加及びそれにともなう憲法9条改定問題である。そして年金問題では、給付財源をどうするか(誰が負担するか)が政策上の最大の争点となっている。にもかかわらず、このマニフェストには、民主党の年金政策の要である財源対策としての「消費税増税」の主張がすっぽりと抜け落ちている。

  また民主党全体としては「創憲」という呼び方で改憲を主張しており、自民党の京都選挙区候補者も「時代に即した憲法づくりを推進します」と改憲公約を正面から掲げている。しかしこの民主党候補者は、イラク派兵・多国籍軍参加・改憲問題には一切触れていない。マニフェスト選挙を標榜し、その中心的な担い手と菅直人氏が推奨する京都選挙区の民主党候補者が、国政の基本である憲法問題や外交政策の帰趨を決する自衛隊多国籍軍参加問題をマニフェスト項目として取り上げていないのだ。これではまるでマニフェストの体をなしていない。頭脳と心臓のないクローン動物のようなものだ。この候補者は、当選後は憲法問題と自衛隊問題には頬被りでもして済まそうというのか。国会議員としてはこれだけでもう十分に失格だ。

  加えて、今回の民主党候補者はもとより代々の民主党候補者が部落解放同盟の推薦を受け、彼らの前で「要求実現のために頑張ります」と誓約してきたことにも一切言及していない。この候補者は、京都の宿痾ともいうべき同和利権・同和行政の根絶に対してどのような政策を掲げているのか、京都の有権者には皆目知らされていないのである。今回の選挙では部落解放同盟の中央書記長が民主党比例区候補者として立候補していることからも、民主党は同和行政に対して最も深い関係を維持している政党だ。その全国拠点ともいうべき京都からの民主党候補者は、誰にもまして解同との「公約」を公開すべきなのである。

  今回の2大政党論の行方がどこへ行き着くかは、いま訪米中の山崎元自民党幹事長の発言をみればよく分かる。彼は講演会の席上で「これからの日本の政局は、改憲を機軸とする自民・民主の大連立によって推進されるだろう」と述べたそうだ。このニュースを知った公明党はさぞかし仰天しただろう。だが、現在の政治動向の行方を本音で語った発言としてはきわめて興味深い。いわば戦前のような体制翼賛型政治を自民・民主の大連立で復活させ、多国籍企業と自衛隊を先頭に「軍事大国」として世界進出しようというのが彼らの21世紀シナリオなのであろう。そのときに公明党が「くたびれた下駄」として捨てられるのは仕方ないが、それとともに平和憲法も国民の基本的人権も捨てられるような事態だけは避けなければならない。

  これが、今回の参議院選挙で私が西山登紀子さんを推薦する理由である。