つれづれ日記
7月6日

  ここ2、3日で大方のマスコミの参議院選挙予想結果が出揃ったようだ。それによると、8カ月前の衆議院選挙と同じく民主党が自民党を圧倒する勢いだという。菅直人前党首以下首脳部にも多数の「年金未納者」を抱え、年金国会の土壇場で「3党合意」を結んで自民・公明案に事実上の「ゴーサイン」を出したはずの民主党が、なぜかくも自公の「対抗勢力」としてマスコミに大々的にクローズアップされるのか。改憲を掲げ、有事立法を推進し、日本人人質事件では自衛隊のイラク撤兵すら明確に主張できなかった民主党が、なぜ「ネオコン」(新保守主義・新自由主義)の正体を暴露されることなく、自公の「対抗勢力」として持ち上られるのか。私には理解できないことばかりだ。

  だがたとえ政治のアマチュアでも、毎日の報道をよく吟味すれば、その背景に横たわる「保守2大政党制」の実現に向けての強固な国家意思の存在や、その意を体したマスコミの巧妙な世論操作に気づくことはそれほど難しくない。

  保守2大政党制へのスタートは、いまからちょうど11年前、自民党の分裂にともなう細川内閣(1993年7月成立、新生党の小沢一郎氏を中心とする非自民・非共産7党の連立政権)とそれに引き続く村山内閣(1994年6月成立、自社さ連立政権)の登場で幕を切られた。とりわけ決定的だったのは、自民党と政権を組んだ社会党が、結党以来掲げてきた「護憲」と「反安保」の旗印をいともあっさりと投げ捨て、自衛隊の存在と日米安保条約を認めたことだ。これで保革の分岐点といわれた政策上の対決点が一挙に消滅し、「中身が同じだが形が異なる2つの瓶」といわれる保守2大政党制への成立条件が整った。当時の社会党は、「首相ポスト」(村山氏)と「衆議院議長ポスト」(土井氏)の両方で自民党に買収された、といわれたものだ。
  それからの10年というものは、もう名前を思い起こせないほど政党再編劇の連続だった。それが昨年10月、小沢自由党の急接近によって民主党との合併話が一挙に進み、(新)民主党が誕生した。そしてこのときから軌を一にして、マスコミによる「(保守)2大政党キャンペーン」が一斉に始まった。そして今回の参議院選挙では、「小沢チルドレン」といわれた元自民党員であり、国内最大流通企業の御曹司である岡田氏が、今度は民主党党首として「政権交代」を叫んでいるのである。

  戦後の自民党体制のスタートとなった1955年の保守合同以来、自民党は高度経済成長政策と補助金政策を通して中央・地方の国内政治体制を巧みにコントロールしてきた。しかし大企業の国際進出にともなうグローバル経済化の下で、海外権益の安全保障のための自衛隊の海外派兵・集団自衛権のフリーハンド行使が求められるようになり、平和憲法とりわけ第9条改憲の必要性が生じた。また国内では、海外投資・海外競争力の強化の必要性から人件費の削減(リストラ)が遮二無二強行され、地方補助金の整理とりわけ公共事業費の削減も進んだ。並行して海外多国籍企業のための国内市場開放も一気に進められ、金融・流通・不動産業などを中心にいま凄まじいばかりの勢いで「構造改革」が強行されている。

  このような多国籍企業主導の体制再編を進めていくうえで、自民党と民主党との間には驚くほど政策の差がない。もちろん自民党内には長年の補助金政策で育てられてきた土建議員など「抵抗勢力」も存在するが、小泉首相が「抵抗勢力との対決」を掲げ、「自民党をぶっ壊す」と叫んでいる限りでは大きな拍手が送られてきた。しかし、リストラ・農産物自由化・大型店進出・年金改悪・医療費値上げなどの「構造改革」によって、暮らしと営業を破壊されてきた真の抵抗勢力が小泉政治の本質に気づくようになってくると(小泉首相の後継者をつくれない状況の下では)、民主党政権を成立させて目先の雰囲気を変えるという新しい政治メニューが必要になってくる。これが現在の(保守)2大政党キャンペーンの舞台裏であり、民主党ブームの背景なのではないか。

  それにしても、保守2大政党制の元祖であるイギリス・アメリカでは、いまや2大政党制そのものが政治危機に瀕しており、民主政治の基礎が蝕まれている。いずれもその原因は他でもないイラク戦争だ。イギリスでは、政権与党労働党も野党第1党保守党もみんなイラク戦争推進派だ。だから両党の地方選挙得票率はいまや空前の低率となっている。第3党の自由民主党が第2位を確保する地方自治体も出てきた。でも国政には国民の意思がなかなか反映されない。アメリカでもブッシュ共和党はもちろんのこと、野党民主党もイラク戦争自体は否定していない。「共和党のやり方が拙い」といっているだけだ。なにしろ民主党は、ケネディ政権時代にヴェトナム戦争を始めた前歴を持つ政党なのだ。アメリカ国民の反戦行動を体現する政党が本格的に登場する機会がなく、政治意思を表現できる民主主義が機能していないのである。

  京都選出の民主党国会議員の著しい特徴は、その主力が松下政経塾出身のネオコンだということだ。スタイルとプレゼン技術の特訓で大衆受けのするパフォーマンスを身につけてきた人たちである。その人たちに対して政治意識の高い京都市民がどれだけの眼力を発揮するか、今度の参議院選挙は21世紀の政治動向を占う新しい試金石である。