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6月28日
6月25日夜、「京都LRT市民の会」の例会が(社)京都自治体問題研究所のオフィス(烏丸通夷川通西入)で開かれた。LRT(ライト・レール・トランジット)とはむろん高性能の低床軽量路面電車のことだが、この会の特徴はメンバー構成がユニークなことだ。市民の会というのだから、環境・交通NPOや一般市民が中心かと思いきや、司会は京都総評事務局次長、会員の多くが京都交通運輸労働組合関係の構成員である。タクシー労組の幹部もいれば、運送会社の社員、京都市バスの運転手もいる。いわば交通労働者の集まりなのだが、それが「市民の会」と名乗っているところが面白い。だが、そのわけはすぐ分かった。会の目的が京都にLRTを新しく走らせることなので、「市民の目線」で行動しようというのがその名前の由来らしい。広範な市民と手を組まない限りLRTの実現は難しいとの認識だろう。いわば「LRT市民派」というところか。
思うに、このような発想が出てきたのも一つの時代の流れかも知れない。それに会の中心が交通権学会会長の土居靖範氏(立命館大学経営学部教授)であることの影響も大きい。土居氏は京都自治体問題研究所の理事長も務めておられるので、土居氏を中心に交通労組や自治体労組のメンバーが集まったのではないか。
会のことはこれぐらいにして、当日の中身に話しを移そう。報告テーマは「イタリア・フランスのLRT最新事情」、報告者は榎田基明氏だ。榎田氏は、本職はまちづくりコンサルタントだが驚くほどの多芸多才の人だ。私のホームページも手伝ってもらっている。とりわけこの日の白眉は、氏のLRTビデオ撮影資料だった。私はカメラは「プロ級」だと自認しているが(公認はされていない、1日最高700枚を撮ったことがある程度)、ビデオはむしろ苦手の部類に入る。瞬間瞬間を切り取る写真のスナップショットと違って、安定したカメラワークが要求されるビデオは、イラチ人間の私にはそもそも不向きなのだ。しかしこの点、榎田氏のテクニックは素晴らしいの一言に尽きる。被写体を捉える最初のアングルが的確であることはもちろんだが、そこからカメラが移動(バン)していく安定した速度と次に展開される場面が抜群なのである。これは、綿密なシナリオに基づいてカメラが操作されていることを物語っている。氏の緻密な性格そのものだ。
ところで、私が10年前あたりまでヨーロッパのLRTを継続的に調査していたときは、(西)ドイツ・オランダ・スイスあたりが先頭を走っていて、イタリア・フランスは圧倒的な後進国だった。むしろLRTなど都市交通機関としてまったく眼中になかったといってもよい。ところが日本では現在フランスの「ストラスブール詣」が続いているように、いまやフランスは一挙にLRT先進国の一角を占めるにまでになった。加えて、今回驚いたのはイタリアの躍進ぶりだ。性能・デザイン・サービス・路線環境のどれ一つをとってみても世界最先端に位置していることは間違いない。とりわけここ数年、ミラノに導入されたLRTシステムは世界最高水準ともいえるものだ。かってはフィアットやアルファロメオなど小型自動車が所狭しと路地に溢れ、幹線道路は交通渋滞のダンゴだったイタリア都市のイメージはもはやそこには見られない。
トヨタ自動車が事実上日本の経済や都市計画の方向を決定しているわが国では、LRTが都市交通政策の主役として登場することはなかなか困難だ。それは、かってのアメリカのゼネラルモータースとロスアンゼル市の関係を思い起こさせる。世界最大の自動車メーカーだったGMは、当時全米でも有数のネットワークを有していたロスアンゼル市の路面電車(民営)を全て買収して撤去し、高速道路中心の交通インフラを整備していく都市計画へと転換させた。その後、同市は道路・駐車場など交通用地が市街地の6割を占めるという自動車都市に変貌していくが、やがて慢性的な交通渋滞と光化学スモッグの頻発など市街地環境の急激な悪化にともなって白人居住者の郊外流出を招き、旧市街地は経済的に恵まれない少数民族居住者(黒人やヒスパニック)の密集地域へと分裂してしまった。もともと「天使の街」を意味したロスアンゼル市は、「ロスト・エンゼル市」すなわち「天使を失った街」といわれるようになったのである。
しかしこの日の会合の明るい希望は、「市民の会」の名にふさわしく多くの環境・交通NPOの参加者があったことだ。しかも京都だけではなく、「大阪にLRTを走らせる会」(1998年結成)、「堺のチンチン電車を愛する会」(2003年結成)などの関係者も姿を見せた。聞けば、堺市では「堺市公共交通懇話会」が、臨海部から南海堺駅・JR堺東駅を結ぶLRT路線の敷設を提言したのだそうだ(2004年1月)。しかもこれが全くの夢物語でないところが面白い。つい最近、三井物産がフランスのゴムタイヤ式LRT「トランスロール」の販売権を獲得し、近く堺市の臨海部で走行実験をするのだという(日経6月17日)。堺市懇話会の提言は、多分この動きと密接にリンクしているのではないか。そうなると、市長選挙対策として突如発表した京都市のLRT「調査計画」についても、これをいつまでも店晒しにしているわけにはいかないと思うがどうだろうか。
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