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6月14日
6月10日、朝日新聞朝刊の一面トップに「出生率1.29戦後最低、年金給付50%微妙」とのスクープ記事が掲載された。女性1人が生涯に産む子どもの平均数を示す「合計特殊出生率」が、02年の1.32から03年の1.29に低下し、戦後初めて1.2台に落ち込んだことがわかったからだ。なぜこんな記事が一面トップになるかというと、直前に成立した年金改革法において、政府・与党が公約したモデル世帯(40年勤続の会社員と専業主婦の妻)の65歳時の瞬間風速的な年金給付水準(現役時の50%、現行は59%)が、03年の1.32という出生率を前提にしていたからである。
人口推計には高位、中位、低位の3通りがある。政府経済計画や社会保障制度設計は、通常、中位推計を基準としている。ところがこれまで出生率はいつも(政策的に)高めに設定されてきたので、実際は低位推計に近い水準で推移してきたという経緯がある。今回も出生率は03年が1.32、07年に1.30で底を打ち、以降は1.39に回復するとの中位推計に基づいて年金保険料と給付水準が算出されているが、実績値は低位推計(01年が1.32、02年が1.29、03年が1.27)に1年遅れで推移しているので、そうなると年金の給付水準は65歳時点で現役時の46%、85歳時点で37%と一層削減されることになる。こんな数字を国会で議論している最中に発表するとまずいというわけか、厚生労働省の発表が例年よりも大幅に遅れていたところ、朝日新聞にすっぱ抜かれたのである。
タイミングというものは面白いもので、第56回の日本人口学会が翌日の6月11日から2日間、東大の山上会館で始まった。人口学会は会員数500人に満たない小規模学会だ。工学系の大規模学会(ちなみに建築学会は4万人)に比べると微々たる存在だが、その影響力は計り知れないほど大きい。なぜなら人口推計を一手に引き受けている厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所のスタッフが名実ともに人口学会の中核として活躍しているからだ。一部には「人口問題の研究機関が、年金政策を扱う厚生労働省の傘下だというのも、学問の自立を妨げているのは事実」(日経新聞6月13日)との批判もあるが、国勢調査や各種人口統計をフルに活用しての研究実績は他の追随を許さない。私も広嶋清志氏(島根大学教授、元人口問題研究所人口政策部長)と人口減少が住宅政策に与える影響について共同研究したことを契機に学会会員となったが、国の将来の根幹にかかわる研究領域であるだけに研究発表も緊張感に包まれている。また研究者の寿命が長いことにも驚く。今回も95歳の黒田俊夫氏(家族計画国際協力財団)が自由論題で発表したのはその白眉ともいえるだろう。おそらく現役最高齢の研究者ではないか。
そんな中で今回の研究発表でとりわけ興味を引かれたのは、大都市を含む都府県の出生率低下に依然として歯止めがかからないことだ。全国最下位の東京都は0.9987と統計開始以来初めて1.0を割った。東京都は全国出生数の9%を占めるだけに、ここで出生率が低下することは全国的に大きな影響を与える。京都府も東京都に次いで低い1.15を記録している。中でも東山区は0.8を割っており、全国市区町村第7位という低さだ。私は、京都市長選挙において京都市が少子高齢化の先進都市であり、東山区はさらに最先端地域だと強調したが、事態はまさにその方向に動いている。由々しき事態だといわなければならないだろう。
年金改革法が政府・与党のごり押しで成立した直後、朝日新聞の世論調査が行われた。それによると国民の67%が否定的評価を下しているという。「年金未納兄弟・家族」の問題も覆い隠したままの強行採決が、いま国民の厳しい批判に晒されているわけだ。この世論が1カ月後に迫った参議院選挙にどのような結果となって反映するのか、その行方を注意深く見守りたい。
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