つれづれ日記
4月21日
  さる17日、18日の両日、西陣のど真中の鉾参通(上京区大宮通寺ノ内西入一帯)で工芸展が開かれた。工芸展といってもどこかの美術館や博物館で開かれているのではない。西陣で織物や工芸品をつくっている作家や職人さんたちが、自分の家を開放して作品を居ながらに見せるのだ。今年の春で3回目だというが、鉾参通に面している数十軒のうち16軒が参加した。「西陣工芸文化村」との幟を立てて、帯・着物・小物などを展示販売するのである。今年は刺繍・京友禅の実演、狂言「土蜘蛛」の上演まで加わって一段と充実したものになった。

  この催しに招待されたのには訳がある。市長選のときだ。西陣の織元・作家・職人さんたちの集まりで、町家を「見せる工房」に改造して、西陣織の製作工程を観光客に公開してはどうかと提案したのがきっかけだった。西陣織は、図案から紋紙づくり(織機のソフト)、染色、織りなど十数種類の工程が職人の分業で進められる。仕事は町家の奥か作業場でひっそりと行われるので、外からは滅多に見えることがない。製品がはじめて一般消費者の目に触れるのは、呉服店や百貨店の店頭に並べられてからのことなのだ。これでは余程の玄人筋を除いて、西陣の着物や帯がなぜこれほど高価なのかを理解することは難しい。製作工程を消費者や観光客に直接見せることで「本物の値打ち」をわかってもらい、その場で買ってもらうことを提案したのである。

  この話を聞いた人たちの中から、すでに同趣旨の考え方を部分的にせよ実行している、是非一度その現場を見てもらいたいとの声が出てきた。それが今回の工芸展の世話役の富坂さんと村山さんだ。加えて村山さんからは「建築家を連れてきてほしい」との注文がついた。仕事場や工房を見せるにはどう工夫すればよいか、よいアイデアがほしいというのである。そこで市長選のときの建築家の勝手連「はらっぱの会」の面々に同行してもらい、村山さんの案内で周辺一帯を歩いてもらった。

  まだ彼らのまとまった意見は聞いていないが、私の率直な感想からいえば、工芸展はまだまだ「点」的存在で「面」はおろか「線」にも成長していないというものだ。通り一帯にそれらしき雰囲気を醸し出すには、やはり参加している店が少なすぎる。集積感や連続感、一体感がほとんど感じられないのである。また、参加している店の多くがすでに町家でなくなっていて、「現代建築」に
建て替えられていたのもショックだった。「町家工房」といったコンセプトがまったくなかったのだろう。

  しかし、求められているのは以前の姿への「復元」ではなくて、現状を前提とした「改造」についての現実的提案だ。はらっぱの会の面々にこれから期待するところ大だが、とりあえず現時点での私の考えを記しておこう。

  まず第1ステップとして、道路を石畳舗装に変え、西陣らしいイメージの街灯(現在は既製品の蛍光灯)にして通り一帯の雰囲気を変える。次に各店の展示販売スペースを常設化するために、現在は応接間などに使われている表の部屋を改造する。そして奥の部屋あるいは別の場所にある作業場・工房(の一部)の機能を表の部屋に移し、道路から「見える工房」にする。最後にファサード(外観)を町家風にアレンジして全体の街並みを整える、というものだ。

  この考え方は、まず通り一帯の雰囲気をかえて細々とでも製品を恒常的に売れる条件をつくり、その上で工房機能を付加することで個々の店への誘引力を増し、最終的には外観を統一して街並み全体の魅力をアップさせるという漸進的アプローチである。なお本文は「みんなで議論!、京都のまちづくり(経済)」の頁にも掲載しました。皆様のご意見をお寄せ下さい。